2015 年 23 巻 p. 100-104
申請者はこれまでに,常温で液体である塩(イオン液体)がマイクロ波照射下で熱源となることを見出した.そこで,イミダゾリウム塩は既存のイオン液体の主な成分であることから,本研究ではイミダゾリウム塩修飾シリカナノ微粒子を作成し,マイクロ波照射下で熱源となり,酵素の熱失活を誘導する系の構築を目指した.得られた修飾ナノ微粒子の水分散液と通常の生理緩衝液とのマイクロ波照射時における昇温速度を比較し,熱源としての機能を評価した.また,アニオン部位を様々に変化させることで,熱源としての効率の向上を図った.さらに,イミダゾリウム部位の置換基を変えることでも機能の最適化を検討した.温熱療法を視野に入れたモデル実験として,酵素存在下,ナノ微粒子にマイクロ波を照射し,酵素活性の低下率を算出した.その結果,耐熱性の酵素やがん細胞で亢進している酵素等,効率よく活性を抑制することができることが示された.