2016 年 24 巻 p. 70-73
現在,低分子有機分子半導体材料の精製は昇華精製によって行うのが最も一般的である.需要に対する生産量確保およびコスト削減のためには,昇華精製における速度の向上,歩留まりの向上が期待されている.一度に大量の粉体原料を昇華精製する際,真空での粉体層の熱伝導率はきわめて悪いため,層内温度についての非定常過程が無視できない.本研究では,定常過程における昇華速度を評価するためのモデル物質としてペンタセンを,非定常過程における昇華速度を評価するためのモデル物質としてアントラセンを用いて,縦型管状炉での昇華速度を実験的に求めると同時に,円柱形の原料層の内部の物質移動,熱移動を考慮した昇華精製数理モデルを作成した.このモデルでは,原料層内の物質・熱の時間変化は拡散項と昇華・析出項の和で表されるとした.昇華精製速度は,実験的検討と数理モデル検討両者から,温度定常状態では層高に依存しないが,温度非定常状態では層高の増大にともなって低下する結果が得られた.これは,温度非定常状態では原料層内の物質移動・伝熱が律速になっているからと考えられる.