2016 年 24 巻 p. 115-118
炉心溶融を伴う過酷事故時に原子炉容器外部を冠水させる新しい原子炉冷却システムとして注目されており,4 MW/m2級の高熱流束除熱が望まれている.しかし,水の限界熱流束は大気圧,飽和状態で約1 MW/m2であり,限界熱流束の向上が必要である.これまでの研究により,ハニカム多孔質体を伝熱面に装着することで,パッシブに限界熱流束が裸面の場合の2倍以上に向上することを確認した.この向上要因として,毛管力による伝熱面への液供給,蒸気排出孔に直接流入する液供給,蒸気排出孔からの蒸気排出の3つの効果が考えられている.一方でナノ流体(ナノメートルサイズの微粒子懸濁液)による限界熱流束の向上が数多く報告されており,その機構は伝熱面に形成されるナノ粒子層が重要な役割を果たしている.そこで本報では,ハニカム多孔質体とナノ流体を組み合わせることによる限界熱流束向上効果について実験的に検討した結果について述べる.