2018 年 26 巻 p. 60-65
本研究では,基剤として比較的安価かつ人への安全性が高い糖類を使用したコンポジット粒子によるDPI製剤の開発を行った.食品添加剤として既に利用されている高度分岐環状デキストリン(Highly branched cyclic dextrin: HBCD)により,吸入粉末剤のマトリックス基剤として開発することを目指した.HBCDは水中での粒子径は20~30 nmの構造であり,親水性薬物および疎水性薬物と相互作用させて,噴霧乾燥により複合粒子を作製し,製剤の各種物性評価および吸入特性評価を行った.さらに,数値シミュレーションを用いて,CT画像から得られた肺内部での粒子挙動について解析を行った.その結果,HBCDはリファンピシンおよびイソニアジドの薬物について,肺深部への到達性を示す値が50%以上となった.さらに,数値シミュレーションを用いて肺内部での粒子挙動について解析した結果,粒子特性の違いにより肺への沈着挙動が異なり,同じ葉気管支でも重力方向への粒子沈着が多くなる傾向を示した.