2020 年 28 巻 p. 18-25
有機溶媒に懸濁した微粒子分散系は広範な工業プロセスで用いられているため,その分散挙動の評価・制御は非常に重要であり,分散・凝集の支配要因である表面間力を理解することが必要不可欠である.しかしながら,有機溶媒中での表面間力の理解は,水溶液中のそれよりはるかに遅れている.そこで本研究では,原子間力顕微鏡(AFM)による表面間力の直接測定と,パルス核磁気共鳴(NMR)による緩和時間測定により,溶媒と表面との親和性と表面間力の性質との関係を検討した.その結果,粒子の分散する系では固体表面間に作用する短距離斥力によって分散がもたらされることを見出した.この斥力は表面に吸着した溶媒分子の立体反発に起因する溶媒和力であり,固体-溶媒分子間の相互作用が大きいときに作用する可能性が示された.一方,表面と溶媒分子の相互作用が弱いときはこのような溶媒和力が顕在化せず,van der Waals力により粒子が凝集することを確認した.