2012 年 11 巻 1 号 p. 113-120
ユリモットルウイルス(LMoV)感染ユリをりん片培養し,再生個体からのLMoV弱毒変異株の選抜を試みた.明瞭なモザイク症状を示すLMoV感染ユリから分離した強毒株LMoV-ML61を感染させたユリ品種‘杜の乙女’のりん片を,1 g・L−1ピクロラムを含むMS培地0~2か月間培養後,MS培地に置床して得られた再生個体から,葉に症状がほとんど出ない11個体を選抜し,各個体に含まれるウイルスを弱毒ウイルス選抜株とした.次に,これら選抜株を含む汁液を感受性の高いシンテッポウユリ品種‘ホワイトランサー’に各々接種して病原性を調査し,さらに2株(LMm76-2,LMm93)を選抜した.人為接種による強毒株LMoV-ML61に対する干渉効果を調査したところ,LMm76-2およびLMm93をあらかじめ接種した区では,無接種区と比較して強毒株接種後の発病個体率が低かった.LMm76-2およびLMm93についてHC-pro遺伝子配列(1,374 bp)の解析を行った結果,各株のクローン間で塩基配列に若干の相違が認められた.LMm76-2およびLMm93各株のクローン間で共通する塩基配列の比較では,異なる塩基配列は3塩基であった.各弱毒変異株クローンとML61クローンで異なる塩基配列は1塩基のみで,808番目の塩基が弱毒変異株ではウラシル,ML61ではシトシンであった.塩基配列から推定されるアミノ酸配列では,HC-proタンパク質の270番目のアミノ酸が弱毒変異株ではシステイン,ML61ではアルギニンであった.