園芸学研究
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育種・遺伝資源
奈良県在来の丸ナス‘矢田系’およびナスF1数品種間における調理・加工適性の差異
西本 登志後藤 公美山口 智子吉田 裕一
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2016 年 15 巻 3 号 p. 221-231

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抄録

業務用高級食材として流通する奈良県在来系統の丸ナス‘矢田系’の調理適性に関する基礎的知見を得るとともに,ナスの調理適性に関する品種・系統間差を明らかにするため,‘矢田系’を含む7品種・系統について,塩漬け,調味漬け,揚げ出し,煮浸し,蒸しおよび焼きの6種の調理を施し,官能評価を行った.また,塩漬け前後の水分含有率の変化と,渋味に影響を及ぼすとされるクロロゲン酸含量と総ポリフェノール含量を測定し,官能評価結果との関係を調査した.美味しさについては揚げ出しを除くすべての調理法において,渋味は塩漬け,蒸しおよび焼きにおいて,果肉の歯ごたえと水気については調査したすべての調理法において,果皮の歯ごたえについては塩漬け,調味漬け,煮浸しおよび蒸しにおいて,それぞれ有意な品種・系統間差が認められた.揚げ出しの油っこさ,煮浸しの味の浸透,焼きの甘味についても,それぞれ品種・系統間差が認められた.美味しさとの間で有意な相関が認められた官能評価項目は渋味,果肉の歯ごたえ,水気および甘味であった.塩漬け,調味漬けおよび揚げ出しでは,果肉のクロロゲン酸含量ならびに総ポリフェノール含量と,調理後の渋味の間で有意な正の相関が認められた.‘矢田系’は,揚げ出しと焼きにおいて果肉の歯ごたえと甘みに優れ,最も高い適性を示した.

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