園芸学研究
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育種・遺伝資源
ソメイヨシノの自家不和合性打破の試みと花粉管伸長に及ぼす影響
鶴田 燃海向井 譲
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2016 年 15 巻 4 号 p. 341-345

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抄録

自家和合性は育種や遺伝学において重要な形質の一つである.本研究は自家不和合のサクラの品種ソメイヨシノにおける自家不和合性の打破を目的に,蕾受粉,柱頭切除および温湯浸漬処理を試みると同時に,それぞれの受粉処理における花粉管伸長を調べた.柱頭切除処理ではわずかな花粉しか受粉せず,花粉管もほとんど伸長していなかった.また,蕾受粉および40°Cの温湯浸漬処理における自家花粉の花粉管は,柱頭からおよそ4 mmの花柱の中央部において伸長を停止していた.これは対照区における花粉管伸長と変わらない(P > 0.05).一方,45°C, 50°Cの温湯に浸漬することにより,有意に自家花粉の伸長が促進されることが示された(それぞれ平均6.9 mmおよび8.6 mm,P < 0.001).特に50°Cの浸漬処理では多くの花柱において,花柱基部までの花粉管の到達が観察され,自家花粉の伸長阻害を打破することができた.ただし,高温にさらした花は受粉後数週間以内にすべて壊死してしまい,自殖種子は得られなかった.

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