2007 年 6 巻 3 号 p. 479-485
夏秋ギク‘岩の白扇’および秋ギク‘神馬’について,東北地域における気温変化により生じる開花時期や切り花品質の変動要因を検討した.長日処理後,自然日長下の温度勾配型温室を用い,外気温の変動に追随して推移する高温あるいは低温条件下で生育させた.各品種について異なる時期に2回試験を行い,それぞれを温室への搬入日により,‘岩の白扇’では7月8日および8月10日搬入作期,‘神馬’では9月22日および10月13日搬入作期とした.‘岩の白扇’では,温度区間で到花日数に差が生じ,特に発蕾以降の高温による開花の遅延が認められた.また,7月8日搬入作期に比べて短日条件となった8月10日搬入作期では到花日数がより短くなった.一方,‘神馬’では,9月22日搬入作期に比べて発蕾前の気温が低くなった10月13日搬入作期の到花日数が長くなり,両作期において低温区で開花が遅延した.‘岩の白扇’では低温および短日条件により管状花率が高くなり,‘神馬’では低温により小花数が減少した.以上より,東北地域において夏秋ギク‘岩の白扇’では発蕾以降の気温変動により8月開花の作型で開花時期が不安定になり,秋ギク‘神馬’では著しい低温条件が開花遅延を招くことが確認された.