抄録
単為生殖のヤモリであるオガサワラヤモリLepidodactylus lugubrisの雄型個体が,琉球列島の石垣島から発見された.この“雄”は,よく発達したヘミペニス,前肛大腿孔,外見的には正常な精巣をもっていた.しかし,生殖腺の組織切片を観察してみると,精巣内における精子形成は不完全で,成熟した精子は精巣上体中にほとんど観察されなかった.したがって,この“雄”は生殖能力がないと考えられる.石垣島や,隣接する島嶼には両性生殖する同属種が存在しないことから,この雄型個体が,南太平洋の島々の個体群で報告されているような,雌のオガサワラヤモリと同属の両性の雄の間での交雑や,後者の同定ミスに由来するとは考えられない.