関西学院大学先端社会研究所紀要
Online ISSN : 2434-4613
Print ISSN : 1883-7042
論文
「移動民」をめぐる語りとカーストの形成に関する一考察
インド・タール沙漠地域に暮らすジョーギーを対象として
中野 歩美
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2013 年 10 巻 p. 19-32

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抄録

インド・ラージャスターン州の西端ジャイサルメール県に、ジョーギーと呼ばれる人びとが暮らしている。「物乞いカースト」、「出家ヨーガ行者(あるいはナート派の信徒)」、「ジプシーの祖先」など、当地のジョーギーを修飾する語りは複雑に入り組んでいる。本稿は、これらの錯綜した集団表象が埋め込まれた歴史的文脈の一端を、19世紀イギリス植民地期におけるジョーギーのカースト化の過程に遡及することで明らかにするものである。導入としてジョーギーに対する「ジプシー」表象を取り上げ、現地におけるジョーギー蔑視の鍵としての「土地所有の有無」の問題を議論する。その後、彼らをめぐる「土地を持たない下層民」という現地の集団表象に着眼し、その成り立ちを植民地期に遡るジョーギーの「カースト化」と「ナート派の二分化」のプロセスの中に跡付ける。本稿は、錯綜した集団表象が立ち現れてきたその過程の検討を通じて、現在を生きるジョーギーという集団の輪郭を浮かび上がらせるものである。

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© 2013 関西学院大学先端社会研究所
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