関西学院大学先端社会研究所紀要
Online ISSN : 2434-4613
Print ISSN : 1883-7042
論文
ナショナルな風景をめぐって
―国立公園選定過程における風景観の交錯-
長尾 隼
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2011 年 6 巻 p. 33-55

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抄録

国立公園とは、単に美しい自然の風景が広がる空間でなく、さまざまな意味や価値が国家によって充填された空間である。この制度がわが国において確立されるのは1930年代のことであり、指定された国立公園の多くは、山岳的な風景を中心とするものであった。しかし、その選定過程のなかでは、海岸風景地も公園区域に含まれてゆくという現象が生じている。本稿は、この海岸風景地の編入という出来事を事例とし、国立公園という「ナショナルな風景」が決定されていく場の政治過程を検討してゆくことを目的とする。海岸風景地の編入に関する議論を検討するなかで、田村剛と脇水鉄五郎というふたりの専門家のあいだで、意見の食い違いが生じていたことが明らかになった。この意見の差異は、海岸風景に対してふたりが抱くまなざしの差異を改めて強調するとともに、互いが理想とする国立公園像の食い違いをも浮かびあがらせる。「ナショナルな風景」が決定される場の多様な風景観・国立公園観が提示されたとともに、そうした風景が決定されてゆく際にいかなる欲望が投影されうるのかも明らかとなった。

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© 2011 関西学院大学先端社会研究所
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