国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要
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アジアの自然保護地域制度の営造物型から地域制型への発展
豊田 哲也
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 1 巻 p. 87-96

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抄録

アジアの多くの国々では私権の排除を原則とする営造物型の自然保護地域制度が導入された。しかし、域内での私権の行使を完全に排除することは困難であり、また、自然保護地域の拡大が必要になったときに既存の私有権を排除することも困難である。それゆえに、近年、営造物型の保護地域制度を持つ国々にも、段階的に私権の規制を認める地域制型の制度が部分的に導入され始めている。アジアにおいてはサバ州のエコリンク政策が、その先例となりうる。また中国などの社会主義の国では国土全般について土地の私的所有が否定されており、自然保護地域の内外を峻別する営造物型の自然保護地域制度にはなじまない。アジアには自然との共生を本質とする自然保護思想ないし自然共生思想がある。そうした思想は、私権の行使を認める地域と認めない地域とを峻別する二元論を超えて、より広い地域で住民の生活と共存ないし共生する地域制型の自然保護地域制度を発展させることを求めている。

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© 2015 公立大学法人国際教養大学アジア地域研究連携機構
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