国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要
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秋田県内企業の中華圏進出の現状と成功条件
棟方 幸人
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2018 年 7 巻 p. 91-113

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抄録

東北地方の企業は、距離の遠さや製造コスト高などを理由に海外展開への関心が薄いとされる。国内一のスピードで人口減が進み、急速な需要や市場の縮小に直面している秋田県内の企業も例外ではない。しかし、海外需要を自社の活力につなげようと展開している中小企業もある。筆者は 2018 年2 月下旬?3 月中旬、中国やシンガポールに進 出した、あるいは進出間もない秋田県内企業を中心に、隣県である青森、山形の企業も含めて調査取材を行った。本論文では、取材先企業への調査取材を基に、秋田という地方から海外に商機を求めていくことの意義について考察する。地方の中小企業が海外進出するには、まず日本国内での経営が技術面、資金面でも確立されていることが大前提となる。その上で、自社製品の特性を十分に理解できるパートナーをいかに見つけ、現地社員を育てていくかが極めて重要である。人間関係の構築に労力を費やし、経営者が自ら動いている企業ほど、中長期的な視野に立ち戦略を軌道に乗せている。中国や東南アジアに進出を考える地方中小企業の課題として、現地勤務する日本人社員同士の交わりが決定的に薄いとの声も上がった。行政や支援機関には、県人会などのような親睦組織に限らず、経済・経営の面で、進出後のフォローや隣県、東北地域を巻き込んだ接点の構築を再考すべきだと考える。他方、地方政府の支援環境は依然活発であり、日系企業の海外進出には、地元地方政府との関係構築が不可欠だろう。姉妹都市や友好提携など県内自治体がこれまで締結してきた政治的関係を維持しながら、ビジネス案件の具体的な構築や進出後のフォローアップを図るべきである。

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© 2018 公立大学法人国際教養大学アジア地域研究連携機構
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