2020 年 45 巻 2 号 p. 117-124
東日本大震災を教訓として津波防災地域づくり法が制定され、津波浸水想定が見直された。全国の海に面した地方都市では、従前からの課題であった人口減少・高齢化に加え、津波災害リスクを踏まえたまちづくりが求められるようになった。本稿ではまず、新たな津波災害リスクに対応した制度と事例について概説する。次に、中心市街地の大半が津波浸水想定区域となる都市において、津波災害リスクを意識して居住地を選択する住民は、従前の住まいよりも交通利便性の低い場所に住む傾向にあるという仮説を立て、それを検証することを試みる。高知市で調査を実施し、得られたデータを分析したところ、仮説を支持する結果が得られた。行政はリスク情報の提供だけでなく、減災に向けた計画的なインフラ整備を推進すべきであるといえよう。