印度學佛教學研究
Online ISSN : 1884-0051
Print ISSN : 0019-4344
ISSN-L : 0019-4344
善導の『観経疏』「散善顕行縁」における「三衣説」の背景
――『大智度論』との関係を中心にして――
王 玉華
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 56 巻 1 号 p. 134-137

詳細
抄録

浄土思想における「念仏」と「戒」の関係については、議論されるところであるが、実践的具体的な見方では「念仏即ち戒」という、伝統的な戒律観が従来から問題となっている。この問題に関して善導(六一三-六八一)に注目したい。善導は龍樹の「易行道」思想から曇鸞、道綽に至る思想を継承しつつ、主著である『観経疏』の中で九品往生について議論する。その中で、念仏について世福、戒福、行福という三福を修行することの重要性を説くが、三福の中で戒律に関する部分として「三衣説」を取り上げている。具体的には、善導は持戒の中でも、三衣と布施のどちらを重視すべきかという問題を提起している。『観経疏』では『大智度論』(以下『大論』と略す)からの引用が少なからず見受けられるが、『大論』に典拠があると明示されていない。よってこの論文では、まず、『大論』における「三衣説」の思想は「大乗戒観」の影響下にあると論じている西本龍山氏の論文をふまえて、『大論』における「三衣説」がどのように説かれているかを考察したい。その上で善導の「三衣説」が『大論』に基づきつつ、どのような意義をもって説かれているのか考察したい。

著者関連情報
© 2007 日本印度学仏教学会
前の記事 次の記事
feedback
Top