印度學佛教學研究
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『発智論』『婆沙論』における得の展開について
楠 宏生
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2007 年 56 巻 1 号 p. 361-358

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抄録

有部が心不相応行法として列挙する得・非得の概念の定立は,その原理が飛躍的に展開する『発智論』『婆沙論』の頃である.殊に『婆沙論』において,得・非得は有情数に限定される諸法の心相続との離・非離関係を指し示すための法として理解されるようになる.ただし,先行研究によって指摘されているように初期論書から『雑心論』までに見られる得は涅槃法の獲得(・成就)を意味するものであり,非得は煩悩法の獲得のみを意味するものである.このように有部の得の本来的意味が「聖法の得」であると指摘している.しかしながら,得が聖道無漏の獲得という有部教義学の当初から心不相応行法として定立され,問題とされてきたのに対して,その対抗概念である非得は『発智論』『婆沙論』の頃になって定立されるという経緯が認められる.そこで本稿では,どのように得・非得の概念が成立していったのかを,非得の定立過程から考察し,その上で得・非得という関係が有部教義学の中で成立していったのか考察したい.

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© 2007 日本印度学仏教学会
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