印度學佛教學研究
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日蓮におけるインド-日本の距離観
――月水御書の系年をめぐって――
若江 賢三
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2008 年 57 巻 1 号 p. 554-547

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抄録

<34>月水御書には,インド・日本間の距離を「二十万里」とする記述がある.本抄著述の系年については,『昭和定本』等は文永元年4月17日としており,現在ではこれが定説化していて,異論が見られない.しかしながら,刊本『録内御書』には「建治元年太歳乙亥十二月十一日」とあり,日隆『録内啓蒙』では「建治元年太歳乙亥十二月十一日トハ古本ニハ建治元年卯月十七日トアリ,又平賀ノ本ニハ文永元年卯月十七日トアリ.」と記されている.『昭和定本』の脚注によれば,平賀本では「異本に建治元年十二月十一日」となっている.また,日奥の『御書新目録』(1686)も『録内御書』と同様である.一方,18世紀に出された日通の『境妙庵御書目録』(1770)では「月水抄」として執筆時を「文永元年四月十七日」としており,日諦『祖書目次』(1779),日明『新撰改正祖書』(1814),小川泰堂『高祖遺文録』(1880),稲田海素『縮刷遺文』(1904),『昭和新修』(1934),『昭和定本』(1954)と,悉くこれに習っている.本稿では,前述の「二十万里」という数値に着目して,以下に月水御書系年の再検討をする.

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© 2008 日本印度学仏教学会
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