印度學佛教學研究
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Abhisamayalamkaraにおける仏身論の分類
―― 21の無漏の徳性の解釈を中心に――
中村 法道
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2010 年 58 巻 3 号 p. 1198-1202

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抄録

Abhisamayalamkaraは般若経を修道論の観点から要約したものと言われ,Maitreyaに帰される.第8章では仏身論が説かれ,三身説・四身説として解釈されてきた.この仏身論は天野宏英氏・佐久間秀範氏・John J.Makransky氏等によって研究されたが,現存最古の注釈書を著したArya-Vimuktisenaをs,或いは三身説を正面から取り上げた研究は少ない.本研究の目的はAbhisamayalamkaraの仏身論の分類を探ることである.三身説・四身説という相違は,第8章第2-6偈の21の無漏(nirasrava)の徳性(dharma),及び第8章第6偈のdharmakayaの語の扱い方に起因する.第8章第1偈(自性身の定義)では無漏の徳性の本質を備えているのが自性身と定義される一方で,第8章第6偈(21の無漏の徳性)では無漏の徳性の集まりが法身(自性身)と定義され,矛盾が生じている.Arya-VimuktisenaはAbhisamayalamkaraが意図する通り三身説を採用し,dharmakayaの語を法性身,即ち自性身としている.以上の点で彼の解釈は偈頌に忠実であると考えられるが,後世の注釈家には継承されていない.Haribhadraは四身説を採用し,dharmakayaを新たに設定した仏陀の身体としている.Ratnakarasanti(Suddhamafi,Sarottama),Abhayakaraguptaは三身説を採用するが,dharmakayaの語を徳性の集まりと解釈し,Arya-Vimuktisenaの説を斥ける.Ratnakarasanti(Suddhamati),Abhayakaraguptaは自性身をdharmakayaの本質とし,Ratnakarasanti(Sarottama)は,21の無漏の徳性を受用身のものとしている.三身説・四身説という2項目の枠組みの中で先行研究が行われてきたが,三身説の中で(1)Arya-Vimuktisena,(2)Ratnakarasanti(Suddhamati)とAbhayakaragupta,(3)Ratnakarasanti(Sarottama)の少なくとも3つの分類があることが明かになった.第8章第6偈のdharmakayaの解釈の1つの形態として四身説があり,3種類の三身説があるのである.

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© 2010 日本印度学仏教学会
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