印度學佛教學研究
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Nagarjunaと初期瑜伽行派の思想形成
―― 『中論』から『菩薩地』へ――
斎藤 明
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2010 年 58 巻 3 号 p. 1212-1218

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抄録

ナーガールジュナが初期瑜伽行派の思想形成に何らかの影響を与えたことを否定する研究者は少ない.瑜伽行派は,『般若経』に対して独自の視点から解釈をくわえ,有部アビダルマとも相互に影響関係を保持し,『解深密経』や『大乗阿毘達磨経』等の独自の論的な経典を創出した.しかしながら,従来の研究に多少なりとも欠落していたのは,同派の思想形成において,『中論』の著者としてのナーガールジュナが果たした役割という視点である.本稿では,tattvaの意味づけ、durgrhita-sunyataとsugrhita-sunyataとの対比,勝義(=涅槃)を獲得するためのvyavaharaないしabhilapaの役割,煩悩の根元としてのvikalpaあるいはprapancaの位置づけという視点を設定する.その上で,『中論』と『菩薩地』(とくに第4「真実の意味」Tattvartha章)の比較考察を通して,『菩薩地』がいかに『中論』を踏まえ,その教理を批判的に継承し,掘り下げ,独白の教理体系を構築するに至ったのかを考証する.

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© 2010 日本印度学仏教学会
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