印度學佛教學研究
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Taranatha の dBu ma theg mchog第1章「中の自性の認識」について
望月 海慧
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2010 年 58 巻 3 号 p. 1252-1259

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抄録

チベット仏教のチョナン派のTaranatha Kun dga'snying po(1575-1634)は,Dol po pa Shes rab rgyal mtshan(1292-1361)の大中観・他空説を展開したとされる.彼にはTheg mchog shin tu rgyas pa'i dbu ma chen po rnam par nges paというテキストがあり,「大中観」思想が論じられている.同論は,全8章からなる偈頌で書かれたテキストであり,彼の著作集には,弟子であるmKhas dbang ye shes rgya mtshoによる詳細な注釈書も収められている.その第1章は「中の自性の認識」と言うタイトルであり,そこではテキスト全体の概要と「中」の異門が説かれている.その特徴的内容をあげると次のようになる:1.Taranathaにとって中観とは大中観である.2.本論は根本・道・結果により構成されている.3.大中観の同義語として,真如・如来蔵・最高我・無変化などの語が並べられる.4.中の略説は,考察されるべき勝義の中と考察する者が領受する五道の中である.5.中の異門として三性説による解釈が見られる.以上のことから,Taranathaの解釈する「中の自性」には,NagarjunaのMadhyamakakarikaに見られる二極の否定による解釈も見られるものの,瑜伽行唯識派による三性説による解釈や,如蔵思想のタームの使用も見られる.すなわち彼は中観,唯識,如来蔵の思想を融合して「中の自性」を解析しており,この思想はDol po paの大中観思想を継承するものである.

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© 2010 日本印度学仏教学会
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