印度學佛教學研究
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佛説安般守意經・新出安般經における「四解依」の解明
洪 鴻栄
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2010 年 58 巻 3 号 p. 1272-1278

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抄録

「四無碍解」(または「四無碍辯」)とは法無碍解,義無碍解,詞無碍解及び辯無碍解のことで,その典拠に関して第一類・法→義→詞→辯の順番と第二類・義→法→詞→辯の順番との二種類がある.前者は毘曇(論)に属する類であり,後者は経に属する類である.しかし,南伝・パーリ語系の経・論には殆どは,第二類の類に属するものである.いっぽう,北伝・漢訳語系の経には前述した二種類とも見られるが,論には殆どは第一類・法→義→詞→辯という順番を取るものである.『新出安般経』の「四解依」(すなわち四無碍解)とは,法解→利解→分別投解→辯才博解のことで,その用語と順番から,北伝の論典,すなわち阿毘達磨に属するものと判断できる.『佛説大安般守意経』における「四依解」の文は,断片的で難解なものでありながらも,幾つかのキーワードによって『新出安般経』の「四解依」の文と対照して新たに考察することができる.その結果,この段の文は『新出安般経』の「四解依」を解釈したものであると推定できる.結論として,この二つの経は大・小安般経の関係をもつ証拠にもなる.『新出安般経』における「四解依」の文は,次のごとくである.「彼如應有諦.從世間法行有亦法世間著.是色陰種…得明慧不漏.是名爲辯才博解.道依如是.是四解依.是時行倶行」『金剛寺一切経の基礎的研究と新出仏典の研究』p.191,line230-p.192,line242『佛説大安般守意経』における「四解依」の文を次に示す.「從諦念法意著法中.從諦念法意著所念.…見陰受者為受五陰.有入者為入五陰中.因有生死陰者為受正.正者道白正.但営為自正心耳.」(T15,no.602,p.169,a9-b3)

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© 2010 日本印度学仏教学会
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