印度學佛教學研究
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静法寺慧苑の教学とその背景
――二種十玄説を中心に――
中西 俊英
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2010 年 58 巻 3 号 p. 1279-1283

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抄録

静法寺慧苑(673?-743?)は,中国華厳宗第三祖とされる法蔵(643-712)の弟子のひとりであるが,その著書『續華嚴略疏刊定記』において法蔵と異なる学説を立て,第4祖澄観(738-839)から厳しく批判され,中国華厳宗の系譜から除かれた人物である.本稿では,慧苑独自の学説のうち,特に二種十玄説を中心にとりあげた.慧苑の教学は,四種教判に端的に現れているように,法蔵の思想的変遷を踏まえて如来蔵思想と華厳教学との緊密性が非常に高く,その傾向は二種十玄説にも現れていた.そして,その二種十玄説は,法蔵の十玄門を大枠では踏襲しつつ,『大乘起信論』や法蔵の『大乘起信論義記』の影響を受けて,慧苑が生み出したものであると指摘した.具体的には,まず,「体事」「徳相」「業用」という形而上的な概念を三層に分けるという二種十玄の枠組みは,『大乘起信論』の体・相・用の三大思想を淵源とすると考えられる.また,その内容のうち,「徳相」の十玄は,法蔵の十玄門と同様,無盡縁起とも称される『華嚴経』の世界観を表現したものであり,もう一方の「業用」の十玄は,仏の利他のはたらきである.特に後者は,法蔵の『義記』における用大解釈を踏襲しつつ,慧苑が新たに創出したもので,ここにも彼の思想の独自性の一端が見出された.

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© 2010 日本印度学仏教学会
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