印度學佛教學研究
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RgvedaにおけるSarasvati
―― RV VII 95,96を中心に――
山田 智輝
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2011 年 59 巻 3 号 p. 1103-1108

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抄録

sdrasvati-は文字通りには「池/湖を持つ」を意味する.Arachosia(現在のカンダハール地方に相当)のイラン名,古ペルシア語Harauvatis,新アヴェスタ語harax^va^i ti-は同語と共通の起源に遡る.Sarasvati川は今日のガッガル・ハークラー川(前者はインド側,後者はパキスタン側の呼称)に比定される.Rgveda(RV)には,VI 61,VII 95,96の三篇のSarasvati讃歌が伝承されているが,VII巻の両讃歌はSarasvantというSarasvatiの男性形対応神格に対しても捧げられている.本稿はこのVII 95及び96を中心に扱い,RVにおけるSarasvatiのイメージを把握することを目的とする.両讃歌中で,Sarasvatiは最上の河川として賞讃され,「豊かさ」や「ミルク」などに関わる様々な恩恵をもたらす存在として語られる.このような描写は,人が生活を営む際に必要不可欠な水や,家畜を養うための貴重な草地を提供するという,河川の特性を踏まえたものであると考えられる.またSarasvatiはMarut神群とも関連付けられるが,両者の関係は「降雨に伴う河川の増水」という自然現象によって説明される.さらにSarasvatiはvajinivati-「勝利する力を持つ女」という語でもしばしば形容される.SarasvantはSarasvatiのみならず,Apam Napat(「水たちの孫」の意)さらには水たち(apas)とも少なからず関連性を有している.しかしながらその全貌を審らかにするにはさらなる考察を要する.

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© 2011 日本印度学仏教学会
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