印度學佛教學研究
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Bhavivekaの勝義説
熊谷 誠慈
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2011 年 59 巻 3 号 p. 1187-1191

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抄録

勝義諦と世俗諦からなる二諦説は仏教では大変重要視された.中観派においては,バーヴイヴェーカあたりの時代から精密な分析が行われ,二諦の細分化が行われ始めた.従来の研究においては,無戯論たる"一義的勝義"と有戯論たる"二義的勝義"という二種の勝義を設定し,バーヴイヴェーカ勝義説を二元的に理解する傾向があった.確かに後代のインドでは,無戯論たる"非異門勝義"(aparyaya-paramartha)と有戯論たる"異門勝義"(paryaya-paramartha)という二種に勝義を区分するようになる.さらに,この二元的な勝義区分はチベット仏教やボン教にまで流入し,影響を与えていった.しかし,バーヴイヅェーカの勝義区分は,無戯論・有戯論という二元的な区分だけでは説明が不十分であると思われる.そこで,本稿ではバーヴイヴェーカの勝義区分を再整理する.バーヴィヴェーカはTJの中で,以下の勝義区分を行い,3つのレベルの勝義を設定する.なお,無戯論・有戯論の勝義区分はbahuvrihiの勝義についてなされるにすぎない.[table]バーヴィヴェーカはPPrにおいても3つのレベルの勝義を列挙しており,アヴァローキタヴラタによる注釈PPTも,TJと同じ構造で勝義区分を行っている.前述の通り,後代のインド中観派は無戯論・有戯論での勝義区分を重視した.現代の学者もそれに従い,バーヴィヴェーカの勝義区分までも二義的な観点から解釈しようとする傾向があるが,バーヴイヴェーカ自身は全体的には三義の勝義を提示しているという事実を抑えておく必要がある.

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© 2011 日本印度学仏教学会
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