印度學佛教學研究
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プドガラ論者とは何者か
―― Mahayanasutralamkarabhasya ad Mahayanasutralamkara XVIII 92-95を中心として――
岸 清香
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2011 年 59 巻 3 号 p. 1205-1211

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抄録

『大乗荘厳経論』世親釈(Mahayanasutralamkarabhasya,MSABh)の多くの章は,論じられる項目ごとに,『瑜伽師地論』本地分「菩薩地」(Bodhisattvabhumi,BBh)と対応することが知られる.それゆえ,MSAは基本的に,BBhに依拠して作成されたと考えられる.しかし,MSA XVIII 82-103の所説は,BBh XVIIに対応する箇所が見あたらない.なお内容面についても,岩本[1997][2000]は瑜伽行派特有のものではなく,アビダルマ的であると指摘する.しかし近年,Kritzer[2005]等の研究から,『阿毘達磨倶舎論』(Abhidharmakosabhasya,AKBh)の所説が,『瑜伽師地論』(Yogacarabhumi,YBh)本地分中の内容と類似するものであることが明らかにされた.またMSABh ad MSA XVIII92-103に見られる経典引用のいくつかは,同様のものがAKBh IX「破我品」や,YBh本地分中にも引用されており,従ってYBh本地分からMSABh,AKBhの所説への影響関係が予想される.本論文は,先行研究の成果を踏まえ,MSABh ad MSA XVIII 92-95に展開されるプドガラ論者批判の内容分析,並びにAKBh IX「破我品」犢子部説批判,及びYBh本地分「計我論」との比較検討を行う.これら諸論書の内容の親近性を考究することで,MSABh ad MSA XVIII 92-95において批判対象とされるプドガラ論者が何者であるのかを明らかにすることを目的とする.MSABh ad MSA XVIII 92-93では以下の三点が論じられる.1)「プドガラは五蘊にのみ仮設される」という立論者の見解,2)プドガラと五蘊の関係,3)プドガラの実在性批判,である.これらは,AKBhやYBhにおいても論じられる項目である.従って,諸論書間の思想的共通性と.YBh本地分からMSABh,AKBhへの思想展開が想定されうる.しかし,MSABh ad MSA XVIII 94-95は,火と薪の喩えを用いてプドガラと五蘊の関係を論じる対論者を批判対象とするが,これと同様の議論は,AKBhIX「破我品」の方にのみ見られる.これはMSABhとAKBhとの親近性を示す証左といえる.このように,AKBh IX「破我品」犢子部説批判の議論展開や思想内容との共通性から,MSABh ad MSA XVIII 92-95におけるプドガラ論者とは,犢子部であると考えられる.

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© 2011 日本印度学仏教学会
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