印度學佛教學研究
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プラジュニャーカラグプタの独自相理解
小林 久泰
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2011 年 59 巻 3 号 p. 1256-1261

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抄録

ダルマキールティが提示するプラマーナ論の特徴は,認識の妥当性をその後に起こる行為の成否によって判断している点にある.しかし仏教の刹那滅理論に従えば,現在時の認識の対象は,その認識によって引き起こされた行動の対象とは異なるはずである.では何故,対象間に時間的ギャップがあるにもかかわらず,ある認識の妥当性をその認識の後に起こる対象獲得経験によって確定することができるのか.この時間的ギャップの問題に対して,ダルモーッタラとプラジュニャーカラグプタは全く異なる解決策を提示している.ダルモーッタラは,正しい認識の対象を直接的認識対象(grahya)と間接的認識対象(adhyavaseya)とに分け,認識の対象と行動の対象をそれぞれ別個なものとみなす.これに対して,プラジュニャーカラグプタは,認識の対象と行動の対象を全く同一なものと考え,現時点で存在する対象を捉えると考えられている認識を誤ったものとみなすことで問題の解決を図っている.プラジュニャーカラグプタによれば,知覚も推理も,未来時に存在する行動の対象をその通りに捉えていない点で,錯誤知に他ならない.しかし,それらの認識の妥当性は,対象獲得に関して我々の期待を裏切らないことによって保証されるのである.彼のこのような考え方は,推理の妥当性を保証するためにダルマキールティが述べた論理を正しい認識一般に拡大させたものである.

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© 2011 日本印度学仏教学会
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