印度學佛教學研究
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AsangaとVasubandhuに帰せられるAbhisamayalamkara註に関する伝承
―― Damstrasenaに帰せられる『般若経』註釈と関連して――
中村 法道
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2011 年 59 巻 3 号 p. 1262-1266

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抄録

Abhisamayalamkaraは,『般若経』の意味内容を修道論の立場から要約した論書であるとされる.インド撰述の現存する21の注釈書に加え,Abhisamayalamkaraに対する注釈書としてAsafigaはTattvaviniscayaをVasubandhuはPaddhatiを著したとHaribhadra著Abhisamayalamkaralokaに伝承されるが,大蔵経の中には確認出来ない.2つのBrhattika(^*Satasahasrikaprajnaparamitabrhattikaと^*Aryasatasahasrikapancavimsatisahasrikastadasasahasrikaprajnaparamitabrhattika)は,3つの教門と11の教説を通して註解する別形式の『般若経』注釈書である.チベット撰述の資料ではBrhattikaがVasubandhu著Paddhatiに相当するという説が存在する.E.Obermiller氏・磯田煕文氏・谷口富士夫氏により,Brhattikaの著者性に関してTshong kha pa Blo bzang grags pa等による議論が触れられているが,インド撰述の資料からの検証は殆ど試みられていない.また,どちらのBrhattikaをVasubandhu作或いはDamstrasena作としているのかが明確にされていない.本研究の目的は,Tattvaviniscaya・Paddhati・2つのBrhattikaに関して,dKar chag IDan dkar ma・dKar chag 'Phang thang ma・Ar Byang chub ye shes・bCom ldan rig ral・Bu ston Rin chen grub・Tshong kha pa Bio bzang grags paによる記述を纏め,BrhattikaがPaddhatiに相当しないというTshong kha paの論証をインド撰述の資料から検証することである.どちらかのBrhattikaをVasubanbhu或いはDamstrasenaに直接帰する伝承は,インド撰述の資料には見られず,チベット撰述の資料で初めて見受けられる.Tshong kha paの論証は,その根拠をインド撰述の資料から確認出来ず,不確実な印象を抱かせる.

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© 2011 日本印度学仏教学会
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