印度學佛教學研究
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*Laksanatikaについて
米澤 嘉康
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2014 年 62 巻 3 号 p. 1236-1242

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抄録

*Laksanatikaとは,その写本を初めて紹介したRahula Sankrtyayanaが付した仮題であり,中観論書に対するサンスクリット語ならびにチベット語のノートが含まれている.その写本は,全18葉,未完であり,ほとんどがチベットのウメ字で書写されている.本稿では,最初に,チベット人のDharmakirti (Dharma grags)が,*Laksanatikaの著者であると同定し,その年代を11世紀後半から12世紀前半と想定している.次に,*Laksanatikaには,以下のテキストが含まれることを報告している.1.Prasannapada (Pras)サンスクリット語ノート(1b1-7a4) 2.Prasチベット語ノート(7a4-9b9) 3.Madhyamakavatarabhasyaサンスクリット語ノート(10a1-14a7) 4.Vaidalyaprakaranaチベット語ノート(14a7-b3) 5.Catuhsatakatikaサンスクリット語ノート(15a1-18b7) 6.未比定のサンスクリット語ノート(18b7-8.ただし,14a1-3のテキストと同一のテキストも含まれる)そして,上記のうち,本稿で初めて明らかになった4.のテキストを紹介している.最後に,この*Laksanatikaの価値について点描されている.すなわち,註釈されている元のテキストに対する批判的研究の重要な資料となりえるばかりでなく,チベット仏教後伝(phyi dar)期における中観論書導入の証左となっていること,さらには,チベット文字の書体学にとっても,検討すべき資料となることなどである.

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© 2014 日本印度学仏教学会
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