印度學佛教學研究
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新発見安世高訳『仏説解十二門経』における四禅の解釈について
洪 鴻栄
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2014 年 62 巻 3 号 p. 1293-1299

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抄録

1999年に発見された安世高訳三つの著作-金剛寺版『安般守意経』『仏説十二門経』『仏説解十二門経』は,中国仏教分野において,最初期訳経史への解明に重要な手がかりになると指摘されている.四禅・四無量心・四無色定という十二門(禅)は,インド仏教の修道論において,戒定慧の三学のうちで定学を総括することは言うまでもない.しかし,もとより独自文化を持っていた中国仏教は,最初からこの十二門の修道論をそのまま受け入れたのか?周知のように,仏教が中国へ入った漢代から,儒教・道教と融和しつつ,唐にいたってインド仏教と異なった中国仏教独自の修道法-禅-が発展してきた.それと同様に,十二門の中で,安世高はなぜ伝統的な四種禅(catukkajjhana)・五種禅(pancakajjhana)と異なった四禅(Four Meditations)を作ったのかという課題は大変興味深いと思われる.筆者は昨年に『仏説十二門経』と『仏説解十二門経』とのテキスト構造においてStefano Zacchettiと違った新たな観点を提案してきた.本稿は「四禅の解釈について」という問題点に絞って検証する.その解決の糸口は『仏説解十二門経』テキスト自体にあるからである.結論として,当時後漢の人々が仏教知識に乏しかったため,安世高は意図的に四種禅(catukkajjhana)の禅支を簡略にして新たな四禅を作った.これは,いわゆる格義的な手法ともいえると指摘したい.

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© 2014 日本印度学仏教学会
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