印度學佛教學研究
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真宗教義の仏性義論
――宗教多元における主体性と社会性への課題――
藤原 ワンドラ 睦
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2015 年 63 巻 3 号 p. 1106-1110

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抄録

本論はこれまでの真宗教義における仏性義が宗教多元の文脈化において主体性と社会性を語るうえで,どのような課題を生じているかを考察する.12世紀に親鸞によって往生浄土教として開かれた真宗教義は,人間中心の救済論を説くキリスト教神学と異を呈する.『教行信証』に引用された「一切衆生悉有仏性」の仏性について,江戸時代から20世紀前半にかけて,様々な学派による仏性義が展開された.本論では,第一能化であった西吟をはじめとする江戸宗学派による仏性義を概観し,それらに対する現代真宗学者の批判的視点を取り上げ,また諸宗教からの仏性観を織り交ぜながら,仏性と他力の関係が如何に主体性と社会性に影響を及ぼすことになるかを考察する.現在の真宗教義では信心仏性説が一般理解となっているが,古来,江戸宗学派の間では衆生の仏種を肯定する本有仏性説と否定する本有否定説の二説がある.また,それら二説から派生した肯定折衷説である無自性仏性説,否定折衷説の遍満仏性説があり,信心仏性説は否定折衷説に入る.仏性肯定・否定の両思想は,究極的には一切衆生が如来の願力によって救済されることに疑問はないが,この肯・否の論点は衆生が如来廻向の名号を領受する可能性を肯定するか,あるいはその可能性さえも否定して,如来から他力廻向されるとすることにある.ここに,阿弥陀如来から他力廻向される本願力である名号を衆生が領受する可能性の有無が問題となる.宗教多元の文脈化において主体性や社会性を語るうえで,如何に仏性と他力の関係を再解釈すべきか,その示唆を親鸞の言葉に立ち戻りながら考察する.

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© 2015 日本印度学仏教学会
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