印度學佛教學研究
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Gargasmphita第39章の構成について
熊谷 孝司
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2015 年 63 巻 3 号 p. 1191-1196

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抄録

古代インドの文献には,多岐に亘って「予兆」「前兆」に関する言及が見られ,その理解は,当時の世界観を理解するのに重要な意義を持つ.予兆集成文献群のうち,特にGargasamhitaは,それらの文献群に共通して現れる賢者Gargaの説の基となっている可能性を指摘されつつも,そのほとんどが写本の状態に留まっている.本研究では,一部が公刊されているのみのGargasamhita写本の研究成果を中心に,Gargasamhita 39, Brhatsamhita 45, Atharvavedaparisista 70b, 70c, Matsyapurana 228-237を比較検討し,Gargasamhita 39を文献史上に位置付けることを試みた.特に,今回,新たに発見されたGargasamhita 39第12項目とMatsyapurana 237とのパラレル箇所の比較を中心とした.また,Gargasamhitaの校訂時には,Adbhutasagara, Adbhutadarapanaに引用されているGargaの説も,写本を補足するものとして使用した.その結果,Gargasamhita 39は,Matsyapurana 228-237以前に成立した可能性が高く,これまで明らかになっている,Brhatsamhita, Matsyapuranaの二者は王権と関わる世俗的立場,Gargasamhitaは王と対等の立場であることを考え合わせると,本研究で扱ったGargasamhita写本の第39章は前掲の代表的予兆文献よりもより原型に近い説である可能性も示唆された.また,Gargasamhita 39の本文の一部を資料として提示した.

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© 2015 日本印度学仏教学会
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