印度學佛教學研究
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ウッドヨータカラのアポーハ論批判再考
岡崎 康浩
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2015 年 63 巻 3 号 p. 1209-1215

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抄録

ウッドヨータカラのアポーハ批判は今まで幾人もの学者によって研究されて来たが,ここでは,『ニヤーヤヴァールティカ』のThakurテキスト,pindの『集量論』第5章の研究を前提に再考してみる.その結果ウッドヨータカラのアポーハ批判は,pindの述べるように『集量論』だけでなく,彼の他の失われた作品からの引用を行っており,しかも,ウッドヨータカラは彼の論点に合わせてかなり自由な引用を行っていることが明らかになった.ただ,ウッドヨータカラの論点は,あくまで普遍や個体を語の指示対象と認めないというディグナーガの実念論者に対する批判への再批判が主となっており,アポーハという概念そのものに対しては,それがどの程度まで実念論学派の普遍と類似性があるか,普遍として扱うにはどういった問題があるかという論点に止まっており,ディグナーガの説明にしたがって丁寧に論破するという姿勢にはなっていない.これも,言葉の指示対象の多様性を認めるニヤーヤの立場をディグナーガの批判から擁護するというウッドヨータカラの主目的から考えれば当然であるようにも思われる.

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© 2015 日本印度学仏教学会
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