印度學佛教學研究
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-eya-によるヴェーダの語根アオリスト希求法形式の韻律分析について
Adam A. CATT
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2016 年 64 巻 3 号 p. 1067-1073

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抄録

リグヴェーダにおいて-aで終わる語根は,-eya-による語根アオリスト希求法を形成する.5つの語根(jna-「知る」,da-「与える」,dha-「置く」,pa-「飲む」,stha-「立つ」)から10例が在証されている(jneyah [x1], deyam [x1], dheyam [x2], dheyur [x1], peyah [x2], stheyama [x3]).このうち,2例(deyam [8.1.5b], dheyam [5.64.4b])は韻律の点から3音節で分析されるべきと言われ,通常,この現象は喉音(laryngeal)によるものとして説明される.本論では,Mandala 8の韻律の特徴を考慮し,今まで3音節で分析されてきたdeyam (8.1.5b)に関して2音節で分析される可能性が排除できないことを示す.この見方にしたがうと,確実に3音節として分析されなければならない例は1例のみ(dheyam [5.64.4b])である.また,このdheyamが現れる箇所の直前のstanzaにおいて3音節で分析される現在希求法形式yayam (5.64.3b)があることが注目される.dheyamとyayamを3音節として扱う見方は,喉音Hで終わる希求法接辞に後続する一人称語尾-mが母音化すること(-y_aam<*-yaH-m),および古アヴェスタ語の一人称の希求法形式diiamとxiiəmが2音節であることを根拠としている.しかし,讃歌5.64のdheyamとyayamを除いて,リグヴェーダにおいて一人称希求法の語尾-yamが2音節として確実に分析できる例は他に存在しない.このことから,dheyamとyayamの3音節扱いは,讃歌5.64に特化した特徴であり,讃歌内部の詩的・韻律的な要因が関与していると著者は考える.

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© 2016 日本印度学仏教学会
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