印度學佛教學研究
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ファグア祭
――バングラデシュのオラオン部族仏教徒コミュニティにおける社会的民間儀礼――
バルア シャントゥ
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2016 年 64 巻 3 号 p. 1316-1320

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抄録

バングラデシュのオラオン部族は,年間を通じて多くの社会的民間儀礼を執り行う.彼らの間で,ファグア祭が最も人気があり,重要な伝統的・社会的祭儀である.ファグア祭はオラオン部族が新年に行う祭儀である.彼らは熱意と厳粛さを伴ってこの祭儀を執り行う.他のコミュニティの人々もその人気と魅力に魅了され,ファグア祭に参加し享受する.本稿では,ファグア祭の種々の面を調査し,この祭儀が単に彼らの宗教的熱望を満たすことに努める儀式・儀礼の一種ではないことを明かにする.ファグア祭には,彼らの生活様式,信仰・習慣の複雑なシステム,思想,行動が反映されており,またアニミスティックな側面を保持している.この祭儀の特色は多文化的・多宗教的な背景において他のコミュニティの祭儀と異なっているため,彼らが自らの部族のアイデンティティを保持することに役立ち,そこにおいてオラオン部族の結束が表現される.また,親族や友人との再会の機会をも提供するのである.一方で,それは農業活動とも密接に関連しているから,豊穣祈願の儀礼に由来することも確かである.

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© 2016 日本印度学仏教学会
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