印度學佛教學研究
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Somākara『Yājuṣajyotiṣa注』に見られるGargaの引用について
呂 鵬
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2019 年 67 巻 3 号 p. 1059-1064

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抄録

Vedāṅgajyotiṣa(VJ)はヴェーダ補助学の一つであり,ヴェーダ祭式を間違いなく行うために暦と祭式日時の計算方法を説き,インド最古の数理天文学とされている.テキストにはリグヴェーダ系のĀrcajyotiṣa(RJ)とヤジュルヴェーダ系のYājuṣajyotiṣa(YJ)と呼ばれる二つの伝承があり,その注釈としてはYJに対してSomākara(年代不明)が施した古注のみが現存している.本論文はSomākara注の中でGargaに帰せらる引用が多く見られることに注目し,その内容を分析する.Gargaは三世紀頃の学者であって,GārgīyajyotiṣaGargasaṃhitāなど一連の文献群の作者とされている.Somākara注に見られるGargaの詩節は,従来研究されてきたGarga作品にある占星的な内容と異なり,数理天文学,特にVJに述べられている古い天文学に従う解説,およびそれに対する補足説明である.このほか,わずかではあるがヴェーダ祭式の点からの天文学に対する見解も含まれている.具体的には五年周期の神格についての教え,太陽・太陰・暦日・星宿という時間の四つの尺度についての教え,月の観測が祭式の日の選定に用いられることと,「lava」と呼ばれる一日の下位の単位の使用などの内容が述べられている.このことはGargaがVJに精通していたことと,Garga文献群が内容的に豊富であることと,VJ天文学の内容がRJとYJ両テキストに残されているもの以外に,ある程度の伝承とその発展があったことを示唆する.また,Gargaに帰せられるこれらの詩節はこれまでは出典不明とされていたが,最近出版されたGargaに関する研究論文と合わせて検討したところ,「dvilavonam」を含む一節が実はGārgiiyajyotiṣaの中にある(若干異読あり)ことが確認できた.したがってSomākara注にあるGargaのほかの詩節もGārgiiyajyotiṣaに由来する可能性が高いと推察される.SomākaraがManusmṛtiなどの古い文献から正しく引用していることを考慮すると,ここのGargaの引用も正しいと思われる.最後に,Siddhāntaと呼ばれるインド中世天文学の特徴が見られないことや,数字の表現方法や,韻律などの点から考察すると,これらの詩節の作成年代はSiddhāntaより前であり,紀元後三世紀頃であると推測される.この年代もまたGargaおよびGārgiiyajyotiṣaの年代に関する最近の見解を補完するものである.

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© 2019 日本印度学仏教学会
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