印度學佛教學研究
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映像説と知覚創出説――マドゥスーダナ・サラスヴァティーの定説に関して――
眞鍋 智裕
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2019 年 67 巻 3 号 p. 1070-1075

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抄録

アドヴァイタ学派においては,この多様な世界は唯一の精神原理であるブラフマンから顕れ出たものとされる.この多様な世界は,精神的な存在と物質的な存在に二分され,そのうちの精神的な存在も,目撃者(sākṣin),主宰神(īśvara),個我(jīva)の三つに分類される.アドヴァイタ教学史において,唯一のブラフマンからのこれら三者の分立の問題に関して顕現説(ābhāsavāda),映像説(pra­ti­bi­mba­vā­da),限定説(avacchedavāda)の三説が存在することはよく知られている.

16世紀に活躍したアドヴァタ学派の学匠マドゥスーダナ・サラスヴァティー(Ma­dhu­sū­dana Sa­ra­svatī)は,その著書Siddhā­ntabindu(SB)において,上記三説に加えて知覚創出説(dṛ­ṣṭi­sṛṣṭivāda)を提示し,これこそがヴェーダーンタの定説であると述べている.しかし一方で,マドゥスーダナは,彼のBhagavadgī­tā­gūḍhārthadīpikā(BhGGAD)のBha­ga­vadgītā(BhG)7.14に対する註釈箇所において,ブラフマンからの目撃者,主宰神,個我の分立を説明するにあたり,顕現説あるいは映像説を前提としているように思われる.

したがって本稿では,マドゥスーダナの顕現説と知覚創出説とに関する記述を検討し,彼が知覚創出説を定説としながらも顕現説に基づいているように見えるのは何故か,という問題を考察した.知覚創出説は,目撃者,主宰神,個我の分立の説明理論を顕現説に依存し,それに現象世界の創出の理論である知覚創出理論を接合してできたものであると考えられる.したがって,マドゥスーダナが知覚創出説を定説としながらも顕現説に基づいているように見えるのは,知覚創出説が,目撃者,主宰神,個我の分立の問題に関しては顕現説と違いがないから,と一先ず言うことができる.

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© 2019 日本印度学仏教学会
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