印度學佛教學研究
Online ISSN : 1884-0051
Print ISSN : 0019-4344
ISSN-L : 0019-4344
『大阿弥陀経』における誓願文について
肖 越
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 67 巻 3 号 p. 1216-1221

詳細
抄録

〈無量寿経〉において,同じく「初期無量寿経」に属するとされている『大阿弥陀経』と『無量清浄平等覚経』(以下『平等覚経』)は,24願を持っているが,それぞれの内容と排列順位が著しく異なりながら,両訳には緊密な関連性のあることを否定することはできない.筆者は「初期無量寿経」に関する一連の考察において,〈無量寿経〉の成立は,『大阿弥陀経』の24願から『平等覚経』の24願へ,そして「後期無量寿経」の48願系へ発展してきたこと,また〈悲華経〉の誓願文は,〈無量寿経〉48願系を受けたものであるという学界の二つの定説が成り立たないことを明らかにし,改めて「初期無量寿経」を読みなおすべきという立場に立っている.この二つの24願の問題が明らかにされなければ,〈無量寿経〉,乃び初期大乗仏典の成立史などの問題は明らかになることはない.本論の目的は,『大阿弥陀経』の24願の成立の問題を文献学的に検討することである.

結論は,次のようである.『大阿弥陀経』における24願は,インドで発生した原始浄土思想の原初形態ではない.漢訳者が阿弥陀仏信仰を当時の中国社会に合うように,工夫に工夫を重ねて『大阿弥陀経』を大幅に修訂したものである.その編集方針は,阿弥陀仏の救済論を強めるだけではなく,往生行者にとっても六波羅蜜の修行システムが重要であると強調することであった.文型形態からみて,『大阿弥陀経』の誓願文は現存の梵本の誓願文の文型形態によく類似している.加えて,これまでの『大阿弥陀経』の成立に関する体系的な研究を踏まえ,『大阿弥陀経』の原初形態は,48願系統であった可能性が高いと判断している.『平等覚経』の翻訳者が,『大阿弥陀経』の誓願文を参考にしながら誓願文の一部を翻訳し,『大阿弥陀経』誓願文の数(24)を維持した.だからこそ,『平等覚経』の誓願文が48願系統の梵本,漢訳の『無量寿経』(魏訳)及び『無量寿如来会』(唐訳)の誓願文の前半によく一致するのである.

著者関連情報
© 2019 日本印度学仏教学会
前の記事 次の記事
feedback
Top