印度學佛教學研究
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ニヤーヤ学派の議論学説における「敗北の根拠」の制限
須藤 龍真
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2021 年 69 巻 3 号 p. 1001-1006

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抄録

本稿はニヤーヤ学派における「敗北の根拠」(nigrahasthāna)の適用範囲に関する思想史的変遷を,論議における適用範囲の制限の点に着目して論じたものである.論議における敗北の根拠の適用制限に関する問題意識はSolomon 1976,岡崎2005,小野2017等にも共有されるものであるが,本稿ではニヤーヤ学派内における当該問題に関する思想潮流を制限・拡大・体系化の段階に分類し論じた.すなわち,論議における敗北の根拠を三種あるいは八種に限定する古典的解釈に対して,バッタジャヤンタやバーサルヴァジュニャ等によって,スートラ解釈に必ずしも依拠しない適用範囲の拡大化が為された.この背景には論理学の精緻化にともなうダルマキールティ等からの「敗北の根拠」批判への応答という要素も大いに伺われる.この傾向性に反して,ウダヤナは22種全ての敗北の根拠を論議の文脈における独自の4区分の中に配分し,あらゆる敗北の根拠の位置付けを試みていることを明らかにした.さらに,以上の分類と密接に関わる問題として,「余分なもの」(adhika)などの特定の敗北の根拠を巡る適用判断基準の変遷について論じた.すなわち,規則依存性の高い敗北の根拠に関して,1)ヴァーツヤーヤナに起因し,ダルマキールティを経て,バッタジャヤンタやバーサルヴァジュニャによって提示されることとなる「拡張的な議論」(prapañcakathā)及び「取り決めのある議論」(niyamakathā)という二種の新規議論形態を認める見解と,2)ウッディヨータカラによる「余分なもの」の常在的過失性の強調を継承するヴァーチャスパティミシュラやウダヤナによる,敗北の根拠の妥当する前提の新規解釈を企図する見解との両者が存在していたことを明らかにした.とりわけ前者については,著作が散逸しているヴィシュヴァルーパの所説との関連性という点からも更なる検討を要する箇所であろう.

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