印度學佛教學研究
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Śākadvīpaの四種姓に関するテキストの変化
永井 悠斗
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2021 年 69 巻 3 号 p. 986-990

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抄録

MBh VI. 12. 33–35はŚākadvīpaを構成する国土として,マガなどの四つの名前を挙げる.この節が,ViṣṇuPやSāmbaPなどのいくつかのプラーナ文献に引用されていることは既に多くの学者によって指摘されている.しかし,そこに見られるテキスト上の細かな違いと,それらが持つ重要性について,これまで看過されているように思われる.

それらの違いの中には,確かに引用の際の単なる書写の誤りも見られるが,一方で,プラーナ文献の編纂者による意図的なテキストの改変を示唆する違いも見出される.本稿では,そのような違いとして,現れる格語尾の違い,太陽崇拝への言及の有無,マガなどを説明する記述量の多寡を指摘する.そして,これらの違いがテキスト上に生じた理由として,「マガ・ブラーフマナ」の社会的地位の変化を想定する.

マガ・ブラーフマナ,あるいは単にマガとは,太陽崇拝を専門とするバラモンで,SāmbaPが語る伝説によれば,彼らはŚākadvīpaからクリシュナの息子サーンバによってインドへと連れて来られたとされる.先行研究は,このマガが古代イラン宗教に起源を持った,イランからインドへの移住者であったことを明らかにしている.こうした外国起源の集団が,インドにおいてバラモンとしての地位を獲得する過程には,何らかの土着化ないしインド文化の受容といった段階があったと想定される.本稿は,そうしたインド化の痕跡が上記の違いから窺えることを指摘し,マガがMBhを引用することによって,自らの権威付けを図り,バラモンとしての社会的地位を確保しようと試みた可能性について考察する.

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© 2021 日本印度学仏教学会
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