印度學佛教學研究
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Mahayanasutralamkara における nimitta の位置づけ
松田 訓典
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2007 年 55 巻 3 号 p. 1126-1130

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抄録

nimitta という語は瑜伽行派の様々な学説を論ずる際に重要な役割を果たしているが, 周知のようにその三性説における分類の仕方は一定していない. ここで問題となるのは, nimitta がMAVにおいては paratantrasvabhava として定義されているのに対して, MSAでは parikalpita の文脈の中で扱われているということである. このことは, 少なくとも nimitta に関する限り, 両者に先行すると思われる vinSg がMAVと同一の分類を行い, 一方で, MSAの構造を受け継いだMSがMSAの分類にしたがっているということを考慮すると非常に興味深いものである.
もちろんこの相違の一因は, MSAが他の諸論書とはちがって, nimitta を五事説の文脈で扱っていないという点にあるが, 瑜伽行派における nimitta という語そのものの重要性を考えると, nimitta という語に対する理解そのものの何らかの違いが反映されていると考えることは妥当であろう.
そこでまず本論文では, MSA及びそれに対するスティラマティの注釈の解釈を再検討することを通して, MSAにおける nimitta 解釈と, それがいかにして遍計されたものの特徴と認められるのか, ということを考察する.

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