電氣學會雜誌
Online ISSN : 2187-6797
Print ISSN : 0020-2878
ISSN-L : 0020-2878
音響管の特性の研究
小林 勝一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1928 年 48 巻 477 号 p. 446-470

詳細
抄録

本編の研究は、纎維物質を懸垂する音響管、壁の剛ならざる音響管及斷面を異にする種々の管よ成る音響管の三つにつき、夫々一例として、ヘーア、フエルト、護謨管及音響瀘波器について、行つてある。
(1) ヘーア、フエルトの特性
ヘーア、フエルト乃至同樣のものについては、單に吸音物質としての研究は、かなり古くから行はれてゐるが、その中の音響傳播の機構を決定するやうな實驗は、未だ見當らぬやうである。之れに關する研究についてA. E. Kennelly及黒川兼三郎氏によりて提案せられた原理がある。ここには、媒質のサージ、イムピーダンスの直接測定に關して一つの提案をなし、これに依つて兩氏の原理に基いて、フエルトの音響的定數を測定し、その中の音響傅播の内容に言及し得る實驗を試みた。ここには、この直接測定法(定常波法)に關する理論、測定装置並に、これに依つて得た實驗の結果について記述してある。
(2) 護謨管の特性
音響イムピーダンスを、ヴアイブロ、メーター及定常波法によつて二樣に測定した。其結果を共に記し理想化された高變成比の音響變成器と共に用ゐられる時は、ヴアイブロ、メーターに依つても、小音響イムピーダンスの測定が相當信頼するに足る結果を與ふることを指摘し、次に、これらの實驗の結果、護謨管の特性として次の事實を指摘してある。
(a) 可聽 波數範圍の重要なる部分に於いて、減衰定數の急激なる増加、並に、同時に傅播速度の急激なる變化が起る。
(b) 壁の振動は.内部の空氣柱に對して、單にリニアー•アドミツタンスを増加する如く、影響する。而も、これは、壁中に起る進行波といふよりも、簡單に、壁の輪切の半徑方向の振動によつて起るものと考へて、差支ない。尚後者に關しては、リニアー•アドミツタンスをスタチカル法による壁の材料定數及寸法の測定より計算し、これと音響イムピーダンスの測定から求めたものと比較し、そのほぼ一致することから證明してある。
(3) 音響濾波器
音響濾波器についてはG. W. Stewart氏並にその他の人々により、從來多くの研究がある。併し設計上必要なる、イメージ•イムピーダンス、カツト•オフ周波數と濾波器寸法との關係が、明かにされてゐない。ここでは、音響濾波器と電氣濾波器との類似を論じ、この關係を明にし、且つ普通の如く管系統を以て構成される時は、各部分の寸法が考へてゐる波長に比して小なる場合でも、斷面の變化による定數分布の變化に對する制限が、電氣濾波器の場合と異り、イメージ•イムピーダン本編記載の研究は財團法人齋藤報恩會より研究費の補助を受け東北帝國大學に於て行つたものである。

著者関連情報
© 電気学会
前の記事 次の記事
feedback
Top