電氣學會雜誌
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起電力分布せる直線受信空中線に就いて
岩片 秀雄
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1932 年 52 巻 524 号 p. 263-275

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抄録

受信空中線の基礎的概念を得る目的で輻射電界に於ける電波のPolarization並電界の強さを與へる一般式を求めた。空中線の傳播常數を無視し得る程度の長波用受信空中線に於ては入來進行波も殆んど表面波に限られ,從つてこれに誘發される起電力に依る電壓及電流の分布も簡單なる定常波と見做されるが,線路の傳播常數を閑却し得ざる如き短波用受信空巾線に於ては表面波以外の各種空間波に依る作用が大きくその取扱ひも餘程複雜となるものでその數學的解法は殆んど見受けぬのであるが,單線空中線の如き簡單なものに於ては電界強度の式にて示される如き起電力が空中線の線路上に一様に分布されるものと見做されるから,各線素間の位相差が線上に沿ふて一定の關係ある場合には,分布起電力の間題に歸してその受信電壓を求めることが出來る。而して此の解法(1)(2)はIIeaviside(3)やCohenが電氣回路の問題に與へた方法を稍擴張して受信空中線に應用せるものであるが尚ほ電波の誘導問題の如き分布起電力の解法等に用ひれば非常に便利な方法の樣に考へられる。
即ち本文は短波用直立空中線や水平空中線の如き單線受信空中線に此の解法を應用した場合を論じたのであるが,短波用空中線はその構造上受電端には任意の長さの饋電線を經て受電端インビーダンス(受信裝置の入力インピーダンス)に接續されるものであるから,本文には受信波長に對する空中線長,饋電線長及地表面上の高さ等をParameterとして受電端インピーダンス及入來進行波の入射方向等に關して受電特性を求めたので,特にその特性中Fadingの一原因と見做されてゐる入射角の不安定に基き,受電電壓に顯著なる變化あることを理論的に立證し得た點を力説してゐる。尚ほ本梗概と最後の結論とに依つて本論文の大要は了知されるものと思はれる。

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