1934 年 54 巻 548 号 p. 183-184
直流タングステン弧光燈の陰極點が或る條件の下に纎條に沿ふて振動する現象を觀察し,これに就き研究した。その振動波形,振幅及び周期に對する諸條件の影響を觀察するに,振動は凡そ2.0A乃至0.5Aの電流範圍に於て發生し,その範圍外に於ては起らない。そしてその電流範圍内に於ては,振動周期は電流の約3~4乘に逆比例する。又燈の冷却状態はこの現象に大なる影響を及ぼすもので,冷却の速なる時には振動周期は長くなる。この現象の原因に就き私見を述ぶれば,陰極點の運動は弧光自身の空間電荷により驅逐される爲に生ずるもので,その移動速度從つて振動周期は電流による加熱と熱傳導による熱の失はれ方との釣合によつて定まるものと考へられる。