電氣學會雜誌
Online ISSN : 2187-6797
Print ISSN : 0020-2878
ISSN-L : 0020-2878
新エネルギーその8.
太陽冷暖房給湯
木村 建一
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 95 巻 7 号 p. 595-602

詳細
抄録

世界中で現在消費されている全エネルギーのうち,1/4~1/3が冷暖房給湯に使用されているといわれている。この割合は比較的高緯度に位置する先進国ほど大きく低緯度地方では小さい。日本では産業用エネルギーの比率が高いためこの比率は小さいといわれる。現在明確な調査資料はないが,日本で冷暖房給湯に使用されているエネルギーの総量は,年々増加の傾向が著しいので,筆者の推算では原独1億キロリットルに近い莫大な量になりつつあるものと思われる。日本全体の化石燃料の燃焼量は環境容量をすでに超えているともいわれ,あらゆる面でエネルギー消費の抑制がなされなければならない。冷暖房給湯の面でも今後できるだけ省エネルギーの努力をすると同時に太陽エネルギーの利用を積極的に行なう必要が認識されつつあり,太陽冷暖房給湯は実用化への一歩をすでに踏み出しているといってもよいであろう。
サンシャイン計画の中でも太陽冷暖房給湯は重要研究開発項目になっているが,長期的視野に立った研究テーマが中心であるので,現在の技術で可能な給湯や暖房のみに太陽エネルギーを利用するシステムはすでに実用化段階というわけで,サンシャイン計画の対象外となっている。太陽暖房給湯システムの住宅への実用化に関しては通産省では住宅産業局の補助金制度によって民間の太陽暖房給湯システム産業を誘発させるという方針がとられている。ただし,この補助金の総額は欧米の相当する政府出資金額やサンシャイン計画の冷暖房給湯の研究開発費に比べればわずかなものである。科学技術庁では既存の技術の組合わせだけで太陽冷暖房給湯は可能であるということを実証し,これを国民に認識してもらうために家族が実際に居住する実験住宅を埼玉県草加に建設した。日本住宅公団では太陽熱利用による暖房給湯を将来の住戸に適用すべく,八王子の量産試験場で実験を行なっている。
本稿では太陽暖冷房給湯について,その技術的詳細を説明するのではなく,むしろわが国のエネルギー問題を背景とする太陽冷暖房給湯の役割を理解して頂くための軽い読物としてそのあらましを書いてみたい。

著者関連情報
© 電気学会
前の記事 次の記事
feedback
Top