抄録
遠方から観察する信号や標識の網膜における刺激サイズは小さい.また,周辺視で信号や標識を検出し,そちらへ視線移動して確認する,という状況は日常多々あると考えられる.本研究では,周辺視野で観測しても中心と同じ色名を維持することができる範囲を測定することを目的とした. 測定は大型視野計を用いて,片眼右で,固視点を移動する方式で視野周辺まで刺激を呈示した.固視点は中心と上下左右各方位5、10,20゜の計13点とした.刺激はCRTで呈示し,平均輝度19.64cd/m2の赤領域(R)10色,黄領域(DaY)9色,緑領域(G)11色,青領域(B)13色と平均輝度59.54cd/m2の黄領域(BrY)12色の計55色を用いた.BrY刺激を用いた理由としては,DaY刺激は輝度が低く,色カテゴリーとして黄色に見えない可能性が前実験により示唆されたので,明らかに黄色に見える刺激としてBrY刺激を作成した.背景はN5.5の灰色とした.評価法としては,反対色型色評価,黒み・白み評価,カテゴリカルカラーネーミング (赤,橙,茶,黄,緑,青,紫,ピンク,白,灰,黒の11基本色名のうち1色名で応答)を行った.被験者は色覚正常な20代男女各1名,計2名とした. カテゴリカルカラーネーミングの結果としては,周辺視野では赤,緑応答は黄,青応答と比べて激減した.上下左右全ての方位について,緑応答は5゜まで,黄,青応答は10゜まで中心と同じ色名が維持される測定点が複数存在するが,赤応答に関してはそのような測定点はなかった.