医療と社会
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健康診断の検査は医療費の予測に有効か
小椋 正立
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2004 年 14 巻 3 号 p. 3_147-3_173

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抄録

 将来の医療費は,全般的な健康状態と現在の医療費によって予測できると仮定したモデルを用いて,健康診断の各検査の数値が予測にどれくらい有効かを検定した。健康状態の指標として,健診の各検査値のほか,今期の傷病名から外生性が認められたものを用いた。分析に使用したのは,1996年度から始まる数年間にわたる2つの健康保険組合の約2万人のデータセットである。1年先の医療費については,BMI,総コレステロール,最高血圧は,平均からの乖離は,プラス,マイナスどちらの方向でも,医療費の増加要因となる。これに対して,平均以上の血糖,クレアチニン,尿酸,ALP,赤血球は医療費を引き上げるが,ZTT,γGTP,GOTが平均以下であれば医療費は下がる。1年先の医療費については,クレアチニンの上方への乖離が最大の増加要因であるが,この結果は5年先までの医療費について持続する。このほかにも血糖と尿酸は同じような性向を示す。これに対して,血圧については,最高血圧は,上方,下方への乖離どちらも医療費の増加要因になる関係が,最低血圧については,下方への乖離が医療費の減少要因となる関係が,それぞれ安定的に観察される。

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© 2004 公益財団法人 医療科学研究所
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