医療と社会
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研究論文
薬剤費患者一部自己負担の薬剤供給に関する影響
大日 康史菅原 民枝池田 俊也庭田 聖子望月 眞弓
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2005 年 15 巻 3 号 p. 3_1-3_11

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抄録

 本稿では1997年9月から1999年6月の薬剤費患者一部自己負担の導入あるいは廃止によって,医師の薬剤供給行動が影響を受けたか否かを検証する。この分析は,医師がその医療行為において患者の効用,特に費用面での負担を考慮に入れているか否かの分析の一つに位置づけられる。使用するデータは,1997年1月から1999年12月までの2地域の老人保健受給者国保全数のレセプトである。これには薬剤一部自己負担が実施された1997年9月から1999年6月までを含んでいる。このデータのユニークな点は,ある個人を識別した上で,同一の個人を36ヶ月間に関して追跡することができるという点である。分析対象はある患者にこの期間で少なくとも1回以上処方された薬剤に限定する。被説明変数は患者毎に月単位での薬剤の投薬の開始あるいは中止の有無,あるいは薬剤数とする。推定結果は医師は自己の所得のみを最大化するとする仮説,あるいは,純粋に医学的に正しい医療行為を行うとする双方の仮説には否定的であるが,医師は患者の自己負担を含めた患者の効用を自分の効用の源泉としているとする仮説は必ずしも否定的ではなかった。

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© 2005 公益財団法人 医療科学研究所
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