医療と社会
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研究ノート
外来受診時における症候群サーベイランスのための基礎的研究
-1年間の運用成績-
中山 裕雄大日 康史菅原 民枝谷口 清州岡部 信彦
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2007 年 16 巻 4 号 p. 387-401

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抄録

目   的:症候群サーベイランスの一つとして外来受診時における症状(発熱,呼吸器症状,下痢,嘔吐,発疹)に着目し,サーベイランスの統計学的な性質を明らかにする。
材料と方法:1998年から2005年までの電子カルテのデータを用いて,該当する症状を抽出する。2005年1月1日以降において,1998年1月1日から前日まで情報を用いてベースラインの推定を行い,それに基づいて翌日の患者数を評価することで,当該サーベイランスにおける流行探知を前方視的に行う。このシステムの有効性を確かめるために,過去のパターンから逸脱した流行(バイオテロを含む)に対する感度・特異度を評価する。
結   果:1998年から2005年までの症状毎の患者数は,発熱20,513件,呼吸器症状42,310件,下痢5,711件,嘔吐5,731件,発疹1,401件であった。前方視的な解析から,発熱,呼吸器症状では2,3月に,嘔吐や下痢では4月中旬に流行を探知した。一部の例外を除いて感度・特異度は非常に高く,このシステムは満足できる性能を有していることが確認された。
考   察:嘔吐および下痢において,当該都道府県で感染性胃腸炎の流行を発生動向調査における公表(2006年5月6日)よりも約3週間早く2006年4月16日(嘔吐),18日(下痢)に探知していた。この情報が直ちに当該診療所に還元され,また地域で共有化される利益は非常に大きい。また,保健所等における対応を迅速にとることができ,流行拡大の抑制に寄与すると期待される。

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© 2007 公益財団法人 医療科学研究所
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