医療と社会
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研究ノート
乳がん患者の情報ニーズと利用情報源,および情報利用に関する困難
文献レビューからの考察
瀬戸山 陽子中山 和弘
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2011 年 21 巻 3 号 p. 325-336

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抄録

目的:国内における乳がん患者の情報ニーズと利用情報源,及び患者が直面している情報関連の困難を示したうえで課題を整理し,実践的な支援について検討する。
方法:医中誌(1983~2010年),CiNii,Medline(1948~2010年),CINAHL(1982~2010年)の検索エンジンを用いた。検索語は,日本語「乳がん」AND「患者」AND「情報」,であり,英語では,“breast cancer”AND“patient”AND“information”AND“Japan”とした。
結果:該当論文は30件であった。論文の内容は,患者の情報ニーズが示されているもの9件,利用情報源が示されているもの21件,情報利用に関する困難が示されているもの12件であった。情報ニーズは,治療や検査,副作用といった医学的な内容から,セルフケアの方法や心理的サポート情報に及んだ。利用情報源は,最も信頼する情報源は医師でありながらも,それ以外に多様な情報源を用いていた。困難は情報収集,理解,利用という3段階にそれぞれ困難が見られた。
考察:患者は医療現場だけでは情報ニーズを満たすことができていないことが考えられた。また,患者の情報利用に関する困難は,情報そのものの不足に加えて,情報の使い方等が伝えられていないこと,患者のヘルスリテラシーレベルにあったコミュニケーションがとられていないこと,ナラティブ情報が軽視されていることによると思われた。さらに,患者自身のヘルスリテラシー不足も,今後の重要な課題であった。

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© 2011 公益財団法人 医療科学研究所
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